vol.1363 照明設計を学ぶ人にとって大切なこと

私は照明設計(照明デザインとも照明計画とも照明プランとも言いますが…)の仕事をしています。
と同時に、その照明設計の方法や照明理論を教える仕事もしています。

すると、

「◯◯の照明デザインの仕方を教えて下さい」
「△△の照明プランはどうしたらよいのですか」

というような質問をいただくことがよくあるのです。

でも、困るのですよね。
業種や施設によって決まった照明設計の方法とか、パターンのようなものは無いのですから。
お答えのしようがありません。

照明設計には何か決まりとかパターンとかモデルがあって、それをパズルのように組み合わせればできるものと思われているのかしら?

私は様々なタイプの施設の照明設計をしてきました。
学校、オフィス、ショールーム、研究施設、飲食店、物販店、住宅…
ありがたいことに、多種多様なプロジェクトに関わらせていただいてまいりました。

でも私は、それぞれの施設の照明パターンやモデルを知っていたから、設計ができたのではないですよ。
そもそもパターンやモデルなんて存在しないし、仮にあったとしても覚えきれるものではありません。

では、何故パターンやモデルといった手本なしに、様々な施設空間の照明設計ができるのでしょうか。

それは、照明理論が確実に身についているから。

私は、これまで学んできた照明理論を基に照明設計をしています。

照明設計で行うのは、
・その場の用途や目的に合った光の状態を見極める
・その光の状態を創り出すために必要な光の条件を決める
こと。

照明理論がきっちり身についていれば、どんな場所、空間であっても、その場の用途や目的に合った光の状態を見極め、その光の状態を創り出すために必要な光の条件を決めることができます。

先日、YouTubeでこんな動画を見て、
「そのとおり!」
と思わず膝を打ちました。

<教養に囚われ過ぎてる現代人へのメッセージが深すぎた【山田五郎 公認切り抜き】>
https://youtu.be/Z9exDuoFpvM

山田五郎さんが仰る「幹と枝」が、照明においては照明理論なのです。
で、「葉っぱ」が既に創り出され何処かに存在する照明デザイン。

「幹と枝」
どんな分野でも同じなんだなぁ。

照明設計をしたい、そのために何をしたら良いのかと考えている方は、まずは照明の「幹と枝」をしっかり作るところから始めてくださいね。

■ at light laboratory の照明講座 ■

【照明基礎講座】

<vol.1334 対面講座のデメリットを解消する試み>
https://bit.ly/3osufBj

でもご紹介しました。
照明理論の基本を6回で学ぶ講座です。
オンラインの動画講座ですので、いつでもどこでも、
ご自身のご都合に合わせて学習をすすめることができます。
現在も、日本の各地からご受講いただいています。

*詳細はこちら
https://light-lab.hp.peraichi.com/basic-lighting

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vol.1362 え~っ、こんな光が…(涙)

昨日、東急百貨店本店が56年の歴史に幕を下ろしました。
今週はそのエレベーターの照明デザイン改修工事をしたときのお話しをしています。

<vol.1360 明日閉店>
https://bit.ly/3DrNToU

<vol.1361 エレベーターの照明デザイン改修をした理由>
https://bit.ly/3YeP4jK

東急百貨店本店があるのは、駅から数百メートル離れた坂の上。
このお店を目指してお客様に足をお運びいただくための仕掛けとして、ガラス張りのエレベーター内に何か光の細工を施そうという企画が持ち込まれました。

ただ、既設のエレベーターに追加設置するものですから、電気容量や設置場所や大きさに制限があります。

さらには、店の裏手にある日本屈指の超高級住宅街の街の雰囲気やその街に住まわれる方のことを考えれば、けばけばしく品のない光環境をご提案するわけにはゆきません。

かくして、「ささやか」に「キラリ」と「華やか」に輝く光をご提案したのです。

では、それはどのようなものであったのか。

使用した光源はハロゲンランプ。
ダイクロイックミラーが付いたタイプです。

ハロゲンランプは、ガラス管の中のフィラメントが熱せられることで発光する光源です。
この光を出す仕組みは白熱電球と同じ。
しかし白熱電球よりも小型で、点光源に近いために光の制御がしやすく、輝きもあることから、店舗照明を中心に多く使用されたランプです。

そしてダイクロイックミラーとは、ガラスミラーに干渉フィルター膜をコーティングした反射鏡。
干渉フィルター膜というのは、可視光を選択的に反射し、赤外線を後方に透過させる働きがあります。

フィラメントを熱することで発光するハロゲンランプは、光のなかに熱(赤外線)成分を多く含みます。
主要な用途である店舗照明ではスポットライトとして使われることが多かったのですが、照射する商品のなかには熱を嫌うものもあります。
例えば、生鮮食料品やチョコレート、クリームを使ったお菓子類、化粧品、宝石(*)など。
(*宝石は鉱物ではあるのだけれど、熱で変質してしまうものもあるのです。変質してしまうと価値が落ちてしまうので熱はご法度という石もあります。)
そのためダイクロイックミラーをつけることで、赤外線(熱)を後方に透過させ、熱成分の減じられた光を前方に照射するようにしたのです。

さて、このダイクロイックミラー付ハロゲンランプには、もう一つ特徴がありました。
赤外線を後方に透過させているのですが、若干他の波長の可視光も透過してゆくのです。
ランプを点灯すると、反射鏡前方にスポット光が照射されると同時に、その後方にもわずかに光が漏れる。
ダイクロイックミラーが光を湛えているように見えるのです。

さらに、ミラーにコーティングされている干渉フィルター膜の成分を調整することで、後方に透過する光の色合いを赤み、緑み、黄色みというように、幾つかの透過色を作ることができます。
その各色も商品のラインアップにありました。

埋め込み型のダウンライトのように照明器具のデザインによっては、この部分が見えないものもあります。
しかし、敢えてミラーが光っている様子が見えるようなデザインの照明器具もあり、ミラーを透過する光を見せることもダイクロイックミラー付ハロゲンランプの使い方のひとつでした。

東急百貨店本店へは、このランプ後方への透過光を活用して「ささやか」に「キラリ」と「華やか」に輝く光をご提案をしたのです。

ガラス張りのエレベーターの籠(人が乗る箱)の中に、ダイクロイックミラー付ハロゲンランプのミラーが光っている様子が見えるデザインの器具を設置、
ランプの向きはそれぞれ異なる方向に向けます。

前面に照射するスポット光、ミラー後方への透過光はそれぞれの方向に照射、あるいは交差し、リズミカルな動きのあるような雰囲気になるようにレイアウトしました。

建物外部からは、主にミラー後方の透過光が見えます。
透過光なので、羽衣を纏ったようなふわりと柔らかい光。
そして明瞭すぎない、ニュアンスのある色光。

明るくカラフルなかにも奥ゆかしさのある光環境を、お施主様も喜んでくださっていたのですが…

あの工事から何年も経ったある日、文化村通りを上っていたらこんな光景を目にしてしまったのです。

<vol.512 ある街で見かけたグレア>
https://bit.ly/3HQadeN

この店舗は、東急百貨店本店の真正面。

グレアに対する配慮の欠如に憤りを感じると同時に、
あの照明設計のときの私の想いは無駄、無意味だったのかとがっかりしたのです。

■ at light laboratory の照明講座 ■

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<vol.1334 対面講座のデメリットを解消する試み>
https://bit.ly/3osufBj

でもご紹介しました。
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vol.1361 エレベーターの照明デザイン改修をした理由

*昨日のメールマガジンのつづきです。

<vol.1360 明日閉店>
https://bit.ly/3DrNToU

今日、56年の歴史に幕を下ろす東急百貨店本店は渋谷にあります。

地名からもわかるように、渋谷の地形は『谷』なのです。
特に渋谷駅はその谷の一番低いところにあります。
大雨のときなどは冠水することも度々。

お出かけになったことがある方ならばお気づきかと思います。
渋谷駅から各方面へ向かう道は、その多くが上り坂。

通りの名に『坂』がつく道も多いですよね。
例えば、「宮益坂」は青山通りに上がる坂道ですし、
「道玄坂」は目黒方面へ向かう上り坂。

通り名に坂はついていなくても、
「公園通り」は代々木公園へ通じる上り坂で、
かつては「東急本店通り」と呼ばれ、東急本店やBunkamuraを経て松濤へ通じる「文化村通り」も上り坂。

東急百貨店本店は渋谷駅から坂を数百メートル上ったところに在る。

この立地こそが、エレベーターの照明デザインを改修することになった理由であり、昨日もご紹介した騒動の原因にもなったのです。

<vol.142 照明デザインの現場-警察を呼ばれることもある(汗)>
https://bit.ly/3RoovpV

東急百貨店の本店は、電鉄系百貨店の本店でありながら駅直結ではありません。
(注:かつては、渋谷駅に直結した東急百貨店東横店がありましたが、渋谷エリア大規模再開発に伴い2020年に閉館しました)

店があるのは、駅から数百メートル離れた坂の上。
そのため、どうしたらお客様に渋谷駅から足を運んでもらえるだろうかという課題を抱えておられました。

そこで目をつけられたのがエレベーター。
この写真(↓)にあるように、建物の前面中央にガラス張りのエレベーターがあります。
https://bit.ly/3WRPz22

実は、渋谷駅から文化村通りの坂道を見上げた時、ほぼこの写真のようなアングルで建物が(見ようと思えば)見えるのです。

このガラス張りのエレベーター内に何か光の細工ができたら、ちょっと目立つのでは…!?
そんなお話が東急百貨店の御担当からエレベーターメーカー持ち掛けられ、そのエレベーターメーカーから私が勤めていた会社にご相談があったのです。

ご依頼を受け、考えました。
現場にも足を運び、
周辺の環境も調べ、
考えました。
う~~~~~んと考えました。

でもどんなに考えても、
「このエレベーターの中にちょっと光の細工をした程度では渋谷駅から見た時にパッと目に入るなどといった効果は得られるははずがない」
そんな結論に達したのです。

だって、
駅とお店の間には隙間なくビルが建ち、
そこには多くの店舗が並び、
それらが雑多な看板やらサインやらを出している
のですよ。
視覚的にうるさい、ノイジーな環境なのです。
数百メートル先のビルのエレベーターが多少キラリと光るぐらいでは、それらの視覚ノイズにかき消されてしまうことは明らかです。

ならば、エレベーターの中を盛大に照らす!?
でもそれは無理なお話です。

そもそも元からあるエレベーターに追加で設置するものです。
電気容量や取り付けることができる場所や大きさに制限があります。

またエレベーターに乗っている方のことを考えれば、万が一にも眩しさを感じるような過剰な光はご法度でしょう。

さらに、東急百貨店の裏手には松濤という屈指の超高級住宅街があります。
政界や財界の重鎮、芸能や芸術などの分野の著名人などの大邸宅が並ぶこの街の住人が、徒歩で訪れる百貨店として知られる東急百貨店本店。
いくら目立たせたい、輝かせたいと言っても、けばけばしく品のない光環境をご提案するわけにはゆきません。

かくして、「ささやか」に「キラリ」と「華やか」に輝く光の意匠をご提案したのです。

(つづく)

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vol.1360 明日閉店

先週金曜日は予告なくお休みしてしまい、失礼いたしました。

この日、私が住んでいる地域に大雪予報が出たのです。
当地でも積もるのかしら…と半信半疑ではありましたが、万が一積もったら大変。
何しろ我が家は小高い丘の上にあり、最近は気温もかなり低いものですから、積もりでもしたら外出できなくなってしまいます。
それで急遽、買い出しやら諸々の用事にと駆けずり回ることになったのです。

夕方からは冷たい雨、そして夜は細かい雪が降ってきました。
7~8センチほど積もったでしょうか。
翌朝は雪かきと相成ったという次第です。

さて今朝、朝食をとりながら見ていたテレビニュースで、東急百貨店の本店が明日で閉店となると報じていました。

<「渋谷東急本店」が閉店…東京からデパートが消える?>
2023/01/28 MSN
https://bit.ly/3kUow92

−・− 以下引用 −・−
2023年春に解体される渋谷の東急本店が、1月31日に閉店する。再開発計画に伴うもので2021年に発表されていたが、ついに56年の歴史に幕を下ろす。

(中略)

東急百貨店本店は1967年11月に開店し、1984年と2002年の全館リニューアルを経て現在に至る。地上9階(9階は屋上)・地下3階で、電鉄系百貨店でありながらターミナル駅直結ではない。高級住宅地の松濤や神山町などに近いため多くの富裕層顧客を抱え、都内百貨店の中では来店者全体に占める徒歩来店者の割合が最も高いといわれている。

隣接する「Bunkamura」は“日本初の大型複合文化施設”として1989年にオープンし、オーチャードホールをはじめ、美術館や映画館など幅広いジャンルの文化・芸術を体感できる場を提供。エンタテインメントの発信基地として注目を浴び、年間約300万人が訪れている。
−・− 引用ここまで −・−

東急百貨店本店とは浅からぬ因縁がある私。
このニュースには感慨深いものがあります。

あ、因縁浅からぬと言っても別に物騒な関係ではありませんよ。
ずいぶん前に記したこのレポートの現場が、実はこの東急百貨店本店だったのです。

<vol.142 照明デザインの現場-警察を呼ばれることもある(汗)>
https://bit.ly/3RoovpV

ああ~っ、警察を呼ばれたといっても別に悪いことをしたのではありませんよ。
ちょっと職質を受けたくらいで…
いえいぇですからぁ、全ては誤解だったの。

ともあれ、このドタバタの警察沙汰(悪いことは何一つしていません)
元はと言えば、東急百貨店本店のエレベーターの照明デザインを改修したことが発端だったのです。

それでは何故、エレベーターの照明デザインを改修するなどということになったのでしょうか。
それは引用した記事にあるように、

<電鉄系百貨店でありながらターミナル駅直結ではない>

ということに関係しています。

東急百貨店本店は、渋谷の駅から歩いて確か10分くらいはかかったように記憶しています。
ウェブサイトには5分とあります。
まあ距離的にはその程度かもしれません。
でも、お店までの歩道は狭く、それでいて歩行者はどの時間帯でも結構多いので歩きづらいのですよ。

そして、渋谷駅から東急百貨店本店まではずっと上りの坂道なのです。

『東急百貨店本店は駅から離れた坂の上にある』

このことが、エレベーターの照明デザインを改修することになった原因なのです。

(つづく)

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vol.1359 メリットがデメリット

昨日は寒い寒い一日でした。
当地の最高気温は、何とマイナス1.4度!
日中でも、まるで冷蔵庫の中にいるような感じでした。

そんな昨日の午後、用事があって南に隣接する市に出かけていました。
出かけている間はずっと晴れて良いお天気。
そして午後3時頃でしたでしょうか、帰宅するために車を運転していたら奇妙な空模様に出くわしたのです。

出先から家へは、国道6号を北上します。
北向きに車を向けると、前方の空が濃い灰色になっていたのです。
それは限りなく黒に近い灰色。

田舎なので視界を遮るような高い建物はありません。
フロントガラスのほぼ全面が灰色に染まっているように見えました。

とこころがです。
バックミラーに映る南の空は、青空。
南方は晴れているのです。

きっと私は天気の境目にいたのでしょう。

さて、しばらく北上し我が家が近づいてきた頃、灰色の空に変化が現れました。
西から白っぽい煙の幕のようなものが漂いはじめたのです。
それは天地のスケールでヒラヒラ&ユラユラと現れた巨大な幕状の浮遊物。

それは恐らく、阿武隈高地を超えてきた雪。
しかし見え方から察するに、相当な密度の雪の群れです。

巻き込まれたら、運転するのが怖いなぁ…

心配しつつ車を進めましたが、幸い家の前の路地に入るまではチラチラと舞う程度の降雪でした。

が、ガレージに車を入れるときには吹雪に。
大量の雪が真横から吹きつけてきたのです。

よかった~!
間一髪で事なきを得ました。

今週は非常に強い寒波のために、各地での降雪が報告されています。
なかには、大きな困難や被害が生じているところもあるそうで、大変心配です。

実は、一昨日からレポートしている信号機も雪によるトラブルが案じられているのです。

<vol.1357 とうとう生産終了>
https://bit.ly/3Dcsu2W

<vol.1358 信号機LED化の背景>
https://bit.ly/3jbDnv1

昨日、

●省エネルギー
●長寿命
●疑似点灯現象防止

以上の三つのポイントから、信号機の光源が白熱電球からLEDに代わっていったというお話をしましたよね。

白熱電球よりもLEDの方がメリットがある。
こうして、信号機の光源が白熱電球からLEDへ置き換えられてゆきました。

ところが実際に運用し始めると、ある地域では大変困った問題があることがわかりました。

それは、降雪量が多い地方に設置されたLED信号機の表示面に着雪して信号が見えなくなってしまうことです。

従来使われてきた信号機の光源は白熱電球。
白熱電球は発熱が多いことが知られています。
例えば一般的な白熱電球では、入力エネルギーのおよそ10%が光で、残りの90%ほどが熱として消費されてしまいます。
この効率の悪さが、時代の要求に沿わなくなって製造が停止される理由のひとつになり、LEDが推進される切掛けにもなったわけです。

一方、LEDから照射される光には熱成分が含まれません。
ただし、基板部には電流が流れますので、照明システム全体としては多少の熱をもちます。
とは言っても、白熱電球に比べれば、その程度は軽微なもの。

ちなみに、信号機表示面の表面温度は白熱電球タイプが通常約40度、点灯時約70度であるのに対し、LEDは常に20度前後であるとのこと。
白熱電球を光源に使用した従来の信号機は、その発熱量が多いがゆえに信号機についた雪はその熱で溶け、降雪時でも表示面に着雪することはなかったのだそうです。

照射光に熱成分が含まれていないこと、発熱の少なさがLED照明のメリットであるわけですが、豪雪地帯における信号機としての用途では、それが完全に裏目に出てしまったのです。

従前の信号機ではそんな問題はありませんでしたから、まさか信号機の表示面に着雪するなど想像だにしなかったに違いありません。

省エネルギーだし、長寿命だし、疑似点灯現象も起こらないしと、恐らく大歓迎でLED信号機を設置してみたら…

着雪で信号の色が見えない。

付着した雪が溶けず、警察には「信号機が見えない」と苦情が寄せられ、警察官がブラシでその雪を除去したこともあったそうです。

表示面に着雪するたび人海戦術で雪(or 氷)かきというのも如何なものかと思いますし、融雪のためにヒーターを設置するというのも省エネの観点からすると本末転倒ですよね。

これまで、

・雪の付着しない塗料を塗布する
・信号機に金属ヒーターをつける
・振動させる
・表示面をやや下向きにとりつける

など、問題の解決のために様々な試みが行われていることは時折報じられてきました。
しかし、決定打となる方策はまだ見つかっていないようです。

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