vol.1240 棚ぼたで上手くいってしまう照明提案もある

さっき昨日の記事を読み返してちょっと苦笑い。

<vol.1239 照明デザインの仕事に喜びを感じるとき>
https://bit.ly/38TcnHr

なんだかこれでは「私が完璧に全てを見通してデザインしている」と受け取られかかねません(大汗)。

幸いなことに大きな失敗をしたことはありませんが、

「あっ、そこにメリット(もしくは効果)があったのね…(汗)」

と、後になって意図していなかった、あるいはそれほど期待していなかった効果に気づかされることもあるのですよ。

要は、棚からぼた餅。
結果オーライではありますけど、なんでそこまで踏み込んで詰めることができていなかったのかと、後になって反省し学ばせていただくこともあるのです。

そんな一例をご紹介しましょう。

このプロジェクトは都内にあるマンションの照明計画でした。
ご家族は、ご夫婦とまだハイハイをしている赤ちゃん、そしてもうすぐもう1人のお子さんが誕生という構成。
引越しをされたタイミングで照明コーディネートのご相談をいただきました。

間取りは3LDK。
建物北側に外廊下があり、そこから玄関に入ります。
この玄関から南に向かって真っ直ぐ伸びた廊下の突き当たりにリビングとダイニングルーム、その隣に六畳の和室があります。
ここは南向きでベランダに面した窓ガラスから自然光がたっぷり入る、とても明るい空間です。

そして玄関入ってすぐのところ、左右に洋室があります。
片方は寝室、もう片方は仕事部屋として使われています。
どちらも窓が外廊下に面した北側にあるため、外光による明るさは期待できません。

さて、件の箇所はこの片方の部屋、寝室です。

寝室の照明プランというと、主に夜間のライティング、1日の終わりを過ごすための照明環境に重点が置かれがちです。
サーカディアンリズム(概日リズム)を妨げることなく、穏やかに眠りにつくための生体リズムに配慮した光環境を整えることは、照明計画の大切な要素となりますものね。

また、「心地よく快適に夜の時間を過ごす」という観点から、インテリア関係の媒体や照明メーカーなどからも雰囲気があって素敵なベッドルームの事例の紹介や提案がよく見られます。
そのため寝室の照明は、夜、寝るまでの生活のためのプラン、そう思っている方が多いのではないでしょうか。

もちろん、そのような考え方でプランをされてもよい物件はたくさんあります。
ただ、今回のお宅を訪ねたとき、このプロジェクトではむしろ朝、目覚めの時の照明環境に配慮してプランすべきだと考えました。

朝の照明というと、変に思われるかもしれません。
季節や天候、時間帯にもよりますが、普通は
「朝は日が出ているのだから照明は点けない」
ですよね。

でも、この寝室は北側にあって外廊下に面しています。
朝日が室内に差し込むことはなく、また陽が上っても、明るさはあまり期待できそうにない。
心地よい目覚めには光(明るさ)が必要です。
自然光が期待できないのであれば、人工光で補うより他ありません。

そこでご提案したのが、朝、予めセットしておいた起床時間にピークになるよう、徐々に明るさを増す機能のあるシーリングライトです。
あ、もちろん入眠用に、セットした時間に向けてだんだん暗くなって消灯する機能も付いています。
でもこのプロジェクトで私が重視したのは、朝だんだん明るくなる機能の方。

ただねぇ、これだけの機能が付いていると、やっぱりお値段もそれなりに張るのです。
ですからお勧めするのをちょっと躊躇いました。
そもそも睡眠の質に関して興味や不満をお持ちでなければ、要らぬお節介ですものね。
そんなわけで、ご提案のときは「こんな機能が付いているので、このお部屋には効果が期待できるかもしれませんね〜」程度にさらっと説明するにとどめていたのです。

結局、お客様は提案したシーリングライトを設置してくださいました。
果たして、満足してくださったのでしょうか?

ドキドキしながら最終チェックのために訪問すると、開口一番
「あの寝室のシーリングライト、とても良いです!!!」
と言われたのです。

驚く私。

聞けば、奥様が入眠と目覚めがうまくできずにお困りだったそうで、このシーリングライトにしてからは快適に生活されているのだとか。
睡眠と照明環境がこんなに関係しているとは知らなかった、と仰いました。
あ〜、それは良かった。

これだけの機能があり、それなりのお値段の製品をお勧めする以上、もっと睡眠と光の関係についてお話しし、睡眠に関するお悩みや問題がないかを尋ねておくべきでした。
反省。
尤も体調に関わることは、デリケートなことですので慎重に伺わなければなりませんが…

とにかく、このプロジェクトで「睡眠障害が照明環境で改善されることもある」という実例を経験したのですから、今後はこの事例に学び、よりきめ細やかなリサーチとご提案をしてゆこうと思いを新たにした次第です。

■ at light laboratory の講座/イベント ■

*昨今の状況に鑑み、対面でのセミナーやイベントは当面お休みとさせていただきます。

【照明講座〈初級〉】
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vol.1239 照明デザインの仕事に喜びを感じるとき

昨日の記事を書いているとき、気づいたことがあります。

<vol.1238 照明デザイナーに必要な「光に対する感性」>
https://bit.ly/2Doksbk

「あぁ、これが照明デザインの仕事の醍醐味なのよね。」

建築家Aさんとのやりとりで、

「すごいですね、照明デザイナーって。
光の状態を言葉で説明できちゃうんですねぇ。」

と言われたとき。
そして竣工後、現場で仕上がりを確認したときに

「いや〜ぁ、こんな風にしたかったんですよ!」

と言っていただいたとき。

<vol.1227 空間照明デザインの現場から − ミッションコンプリート。しかし…>
https://bit.ly/31WXB0z

お客様が、私が提案した照明環境に満足してくださったり喜んでくださっている様子に接したとき、心から嬉しく思うのです。
これは、どのお仕事でも同じかもしれませんね。

照明デザインという職業は、まだよく知られていないように思います。
一般の方々が照明デザイン、照明デザイナーと聞いたとき、どのようなことをする仕事と思われ、何を期待されているのでしょうか。
もしかすると私の仕事のスタイルと違うのではないかと、ちょっと不安になることがあるのです。

単に、その空間の雰囲気に合う素敵な、あるいはお洒落なデザインの照明器具をセレクトするだけなら、照明デザイナーでなくてもできることです。

単に、その空間に求められる照度を得るために必要な照明器具の台数を割り出して配置するだけなら、誰でもできるのです。(現在広く使われている照明設計ソフトは、ネット上で無料で提供されているのですよ!すごい時代になりましたね。)

私が考え、そして実践している照明デザインは、照明の専門知識に基づきお客様あるいは空間にとって最善かつ最良の照明環境をご提案すること。

お客様にお目にかかりお話をし、現場を見て、
・その空間がどのような場所なのか
・何が行われるのか
・どのような人が滞在するのか
といったその場の目的、用途に相応しい光の状態を創造してゆきます。

このとき、
・光の性質や振る舞い
・物の見え方、脳での認識の仕方
・雰囲気による心理状態
・色再現の分析、色の見え方や感じ方
・照明システムの技術
・意匠性
など光の本質と人間の生理的、心理的な感覚(主に視覚)の調和を図り、空間の光の状態を決定してゆくのですが、ここに専門知識とそれらを活用する技術、スキル、経験を注入するわけです。

私が照明デザインのご提案をすると、お客様が驚いたような様子をされることがあります。
多分、想像していたことと違っていたのでしょう。

「こんなデザインの器具を取り付けます。」
「照度は何ルクスです。」

照明デザインのご提案とは、そんな通り一遍のことをお伝えすることではないと考えています。

お客様からお聞きしたこと、そこから専門知識を駆使して考察した結果として
・その空間にどのような光が存在することが望ましいのか
・光が何をどのように表現するのか
・光がどのように働くのか
・光にどのような機能を持たせるのか
といったようなことを、理由や根拠を示しながら提示してゆくのです。

光の在り様をかなり詳細にお話しするので、始めは少し怪訝そうな表情をされます。
しかし、だんだん目が輝き出し、体勢もちょっと前のめりになってくるのですよ。
そして、

「照明がどのようになるのか、すごくよくわかりました。」
「完成が楽しみです。」

と言ってくださるのです。
さらに、完成した照明環境を体験されると、

「プレゼンテーションで仰っていた状態が実感できています。」
「やっぱり、あなたにお願いして良かった。」

とまで仰っていただいて…

こんな嬉しい、ありがたいことはないではないですか!
照明デザインの仕事に喜びを感じるのは、こんなお声を頂戴するときです。

これまで私が学んできた照明理論、私が身につけてきた技術やスキル、そして私が関わらせていただいた様々なプロジェクトで経験させていただいたこと、
これらを基に、今後も私にしかできない照明デザインを行ってまいります。

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vol.1238 照明デザイナーに必要な「光に対する感性」

以前ご紹介した照明デザインプロジェクト。

<vol.1222 空間照明デザインの現場から − SOSが来た>
https://bit.ly/39AMYRp

元々建築家Aさんが照明プランをしていたこのプロジェクト。
プランした照明器具のサンプルを取り寄せて点灯テストをしたところ、クライアントから「暗い」と言われ、照明計画は振り出しに。
そこで私に協力要請が来たという事情がありました。

現場へ赴き、なぜこの場所でこの照明器具の光が暗く感じられてしまったのかを解説したときのことです。

<vol.1225 空間照明デザインの現場から − 現場で光察しプランを詰める>
https://bit.ly/3f8MxBf

−・− 以下引用 −・−
建築家Aさんと合流し、依頼箇所の共用通路へ…

まずは、Aさんのプランがなぜ暗いと感じられてしまったのか、その理由を明らかにしてゆきました。
・選定された照明器具の特性と光の広がり方
・視覚にどのように映るか
・心理的にどのように感じられるか
といった観点から解説。

すると、Aさんはようやく合点がいったという表情になりました。

実は、クライアントさんから暗いと指摘された点灯テストで、Aさん自身も同様に暗いと感じられたそうなのです。
でもメーカーのカタログには、選んだ照明器具がオフィスやショールーム、店舗など、もっと広い空間を明るく照らしている写真が掲載されている。
ここはそれよりももっと狭い空間なのに、なぜ暗くなってしまうのだろう?
不思議に思われていたのだそうです。

この空間がどのような構造、素材で構成され、
そこでは光がどのように振る舞うのか、
そして結果として人はこの照明空間にどのような印象を持つのか
これらを順を追って説明することで、ご理解いただくことができたようです。
−・− 引用ここまで −・−

このとき、Aさんがこう仰ったのです。

「すごいですね、照明デザイナーって。
光の状態を言葉で説明できちゃうんですねぇ。」

いえいえ、私達は、その光の状態を創り出すことが仕事なわけですから、これは何も特別なことではありません。
常に、各所で光がどのような状態であるかを意識し、光について考えているのですもの。

それは目で見ることができない空中での光の状態についても同様。
これができなければ、とてもAさんにしたような説明はできません。
このとき働かせるのが(光に対する)感性です。

ところで、「クリエイターは感性が大切」などという言葉を耳にすることがありますよね。
もちろん照明のデザイン、照明環境の創造にも感性は大切、無くてはならないものです。

ただ、誤解しないでいただきたいのが、感性と言っても「たまたま頭に浮かんだ思いつき」とか「なんとなくの感覚」といった曖昧なものではありません。

照明デザイナーが対象とする光は自然現象です。
その存在は物理の理論で説明され、法則に則って現象が現れるものです。
ですから、まずベースとして光の原理を知っておく必要があります。

その上で、光を観察して光の状態を分析・推測するトレーニングをしたり、仕事などを通して様々な光の経験をすることから、光を認識する感覚を養ってゆくのです。

感性などというと、元から具わっているセンスのように感じられるかもしれません。

もしかすると
「照明デザインをしてみたいけれど、自分にそんなセンスがあるかしら…」
と不安に思っている方がいらっしゃるかもしれません。

でも大丈夫!
そんな心配は全く要りませんよ。

きちんと理論を学習して、光の見方や考え方を学んでトレーニングをすれば、光に対する感性は誰でも身につけることができます。
これは今まで長年にわたり大手照明メーカーの社員や学校の学生、私が主宰する照明塾にいらっしゃる沢山の方々にレクチャーをしてきた経験から自信を持って言えること。

光に対する感性は自分で育てることができるのです。

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vol.1237 インテリアデザイナーに教えられた照明器具の役割

照明デザインとは、ひとつひとつの光に意味と役割を与えること。

・その空間がどのような場所なのか
・何が行われるのか
・どのような人が滞在するのか
といったその場の目的、用途に相応しい光の状態を創造してゆくこと。

そのために、
・光の性質や振る舞い
・物の見え方、脳での認識の仕方
・雰囲気による心理状態
・色再現の分析、色の見え方や感じ方
・照明システムの技術
・意匠性
など光の本質と人間の生理的、心理的な感覚(主に視覚)の調和を図り、空間の光の状態を整えてゆきます。

照明デザインは、このような考察のプロセスでひとつひとつの光に意味と役割を与え、光で空間を構築してゆくのです。

さて、照明デザインを行うなかで、照明器具はどのように選択されるのか。

それは当然、意図した光の状態を創ることができる
・光の質(光色や演色性、光束、光度などの光の要件)
・配光(光の広がり)
・デザイン(意図した光の状態、空間と調和のとれた意匠)
・その他の機能や性能
であることを確認しながらセレクトしてゆくわけです。

間違っても、単に照明器具のデザイン(姿形)で「お洒落」「スタイリッシュ」「かわいい」「格好良い」「好み」だから…などといった、曖昧で主観的、表層的な理由で選ぶことはありません。

選択する照明器具には全て、その空間に使用する明確な根拠があります。
そして照明器具のデザインばかりでなくレイアウトや設置方法まで含めて、空間において果たすべき意味と役割を担っているのです。

ところで、光の意味や役割はそれぞれの空間によって異なります。
これまで様々な空間の多様な光の意味や役割、照明の在り様を創造しご提案してきたわけですが…

先日、YouTubeで海外のインテリアデザイナーがご自身の手掛けたプロジェクトを紹介する動画を見ていた時のことです。
照明に関する説明をしていたとき、彼女が語ったその空間における照明の役割は、今まで私が考えたことのないものだったのです。

それはスキンケアサロンのプロジェクトでした。
テナントビルの一室に設けられたこのサロン。
それほど広くはない空間に、待合室&物販スペース、二つの施術室、スタッフの控え室が配置されています。
また大きな窓が二面にあり、とても明るい空間です。

色彩プランを見てみましょう。
天井と壁面は白色で明るく清潔な印象です。
床や棚などに用いられた木材は薄いブラウンで、北欧のテイストの軽やかさと明るさ感があります。
また、棚の支柱や照明器具などの金属部に使われている真鍮は、ゴージャスな雰囲気を添えると同時に空間の印象を引き締めているように見えます。
そして、待合室のソファや椅子には、アクセントカラーとなるスモーキーな淡いピンク。
スキンケアサロンという空間の在り様がよく考えられた色彩計画だと思います。

さて、私が感心したのは待合室&物販スペースの照明です。
その空間の天井はスケルトンになっています。
恐らく、天井を高くして開放感を得るためでしょう。
しかしそこには空調をはじめとした様々な配管が張り巡らされ、ゴチャゴチャしていて視覚的にうるさい。
そのためでしょうか、この配管も含め天井全てが白色に塗装されていました。

そしてそこに設置されているのが、真鍮でできたリング状の吊り下げ形照明器具です。
リングは二重で外側が直径700〜800mmくらい、そして内側のリングはそれより一回り小振りで、この内側リングにのみ上方と下方に光が照射するようLEDが仕込まれています。
つまり、一台で直接照明(下方への照射)と間接照明(上方への照射)ができる器具ですね。
形状はシンプルですが、この素材でこのサイズですから十分に装飾的で存在感があります。

このスペースの照明環境についてインテリアデザイナーはこう語ったのです。

「天井に張り巡らされた配管は視覚的には邪魔になる。
しかしここを訪れる人は、このゴージャスな照明器具で視線が止まり、その上にある配管の存在に気を取られることはない。」

う〜ん、なるほど!

「そこに視線と意識を留め、周辺にあるものの存在感を消す」
そんな光の意味と役割、
こんな照明器具の使い方があったのか…

何れ、何処かのプロジェクトで同じ様なシチュエーションに出くわしたら、
是非この考え方を活用させていただきたいと思います。

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vol.1236 在宅勤務のあかり−自宅で仕事をするときに気をつけたい照明のこと

新型コロナウイルス感染症をきっかけに、新しい生活様式が提案されています。
そこには働き方についても示されています。

いわく、
・テレワークやローテーション勤務
・時差通勤でゆったりと
・オフィスはひろびろと
・会議はオンライン
・対面での打合せは換気
とのこと。

尤もこれらは今に始まったことではなく、新型コロナウイルスの感染が始まり緊急事態宣言が出された頃から既に実行を余儀なくされてる方もおられるかと思います。

このなかのひとつ、テレワーク。
パソコンと通信設備があれば何処でも働くことができる…
ということなのでしょうが、まあ、多くの場合は自宅でお仕事となるのでしょうね。

さて、そんな在宅勤務の需要があるためか、近頃、インテリア関係の媒体でテレワーク向けの情報が目に付きます。
つい先日も、住宅リフォームを手掛ける方がテレワーク向けリフォームでの注意点を記した記事を興味深く読んだばかりです。

仕事スペースに空調が届くかとか、
資料や道具の収納スペースがきちんと確保できるかなど、
具体的な例を示しながら記された文章をふむふむと読み進めるうちに、
「そう言えば、照明にも注意していただきたいことがあるわ」
と思い至ったのでした。

そこで、自宅で仕事をするときに気をつけたい照明のことをお話しいたします。

それは、
「パソコン作業中、周囲が薄暗くなったら照明を点灯する」
ということ。

「なぁ〜んだ、そんなの当たり前!」
という方もいらっしゃるでしょうけど、そうでない方もおられるのでは…?

ディスプレイって明るいですよね。
だから、
「パソコンの画面を見て行う仕事なら別に照明を点けなくても良いでしょ?」
という方がいらしたら、ぜひ知っていていただきたいのです。
だって、これって目の健康のことを考えるとちょっと問題ありなんですもの。

人間の目は周囲の明るさに応じて目の中に取り入れる光の量を加減しています。
それは、瞳孔の大きさを変化させることによって行います。
周囲環境が明るいときは瞳孔を小さく、暗いときは大きくしているのです。

さて、昼間は十分に明るいお部屋であっても、陽が傾いてくるとだんだん暗くなってきますよね。
すると、周囲の僅かな光をできるだけ取り込もうと、次第に瞳孔は大きく開いてゆきます。

一方、ディスプレイからは光が出ています。
ディスプレイの輝度って、結構高いのですよ。

仕事をしていると画面にずっと注目しているし、また意識も集中しているでの気づかないことが多いのですが、私たちの視野の中でディスプレイの占める面積の割合って案外小さい。
つまり、午後遅い時間になるに従い視野の大部分の景色はだんだん暗く、そのほんの一部に輝度の高いものが存在している状態になるのです。

景色の大部分が暗くなってゆくにつれ、瞳孔は大きくなる。
しかし、その広がった瞳孔のサイズに対しては多すぎる光がディスプレイから目に入ってくることになるのです。

この状態が、目の疲労を引き起こすと考えられているのです。
照明工学ではこのような状態のことを『不快グレア』と呼んでいます。

ですので、
「明るいもの(ディスプレイのことね)を見ながら仕事をしているから照明を点けなくても大丈夫」
とは思わないでいただきたいのです。

お天気の悪いちょっと暗い日や夕方になったら、天井照明やデスクスタンドなどを用いて作業空間と周辺部の明るさをきちんと確保するようにしてくださいね。

■ at light laboratory の講座/イベント ■

*昨今の状況に鑑み、対面でのセミナーやイベントは当面お休みとさせていただきます。

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