vol.617 琳派を照らす光

芸術の秋。

先日、「鈴木其一 展」を訪れました。
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_4/index.html

美術の知識はありませんが、鑑賞するのは大好き。
殊に日本絵画が好きで、これはと思う展覧会にはなるべく行くようにしています。
この鈴木其一の展覧会もそのひとつ。

琳派の画を見ていると、気持ちが晴れ晴れとしてきます。
華やかで、
大胆な構図が豪快で、
それでいて精緻な技巧がこらされていて、
モダンで…
何でも昨年、2015年が琳派400年の記念年だったというのですが、
今、この時代に見ていても新鮮で、とてもお洒落なのです。

この展覧会でも、琳派の魅力をたっぷり堪能してまいりました。

琳派の作家が挙って描いている「風神雷神図」。
俵屋宗達も尾形光琳も酒井抱一もみんな屏風に描いています。
それなのに、構図こそ同じながらも、鈴木其一は襖絵。
さすがに大きく、迫力がありました。

それから「夏秋渓流図屏風」。
川の上流、木立と苔生す岩の間を勢いよく流れる水流が描かれています。
ただ、この季節の渓谷の木立ならば鬱蒼としているか、鮮やかな青葉に陽が差し込み涼しげな景色となりそうなところ、この画の背景はどっしりした金箔地。
そして、苔の色は鮮やかな真緑で水の色も真っ青。
水流は金彩でしっかりと描きこまれ、どうどうと音を立てて流れる様が表現されています。
渓流を描いた日本画としては、かなりアニメというか漫画的なインパクト。
しかし、その中に描きこまれたヤマユリ(夏の図)と紅葉(秋の図)が非常にリアルで、特にヤマユリは匂立つようにさえ感じられました。

そして、お目当ての「朝顔図屏風」。
やはり重みのある金地の屏風に描かれた、鮮やかな朝顔の花と蔓。
朝顔の花の表情は、どれも判で押したように同じ。
時々アングルの異なる花、そして蕾がポツポツと。
描かれている要素はそれだけなのに、レイアウトと構図の巧みさで六曲一双という大きなスペースが退屈に感じられない。
画面にリズミカルな動きがある。
何という絵でしょう!
近づいたり遠ざかったり、また近づいたりと、暫くの間鑑賞していました。

さて、このように琳派といえば、金や銀の彩りも魅力です。
それぞれの絵の金や銀がどのように光を受けているのか。
そして、その受けた光を反射しているのか。
見る角度が変わると、画面がどのように変化して見えるのか。
私には、そのような光の関わりを鑑賞することも楽しみのひとつです。

この展覧会で「あらっ!?」と思ったのは、酒井抱一の「槇に秋草図屏風」への照明。
酒井抱一は鈴木其一の師匠です。

二曲一双の小さな屏風で、淡い金地に秋の草花が繊細に描かれています。
この作品には、地色が淡い金であるためか、直射光はほとんど当たらないように展示されていたのです。
光が直接当たらないようにした代わりに、作品の手前の床で反射した光が画面を照らしていました。
それが、淡い金地の柔らかな輝きを引きだし、草花の姿を浮き上がらせているように見えます。

どっしりした重みを感じる金には直接光、
薄く淡い金には反射光、
光の当て方を変えることで、それぞれの特徴と魅力が存分に伝わる。
その好例を見ることができました。

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